私は当分子猫の気持ちで他人に懐く物を落とすお前を引っ掻き回す。念入りに毛を繕う。すぐに熱中してすぐに飽きる。

雷の隙間に僕たちはいた。廃墟みたいな赤茶のビルの屋上で、カラスがじっとこっちを見ていた。遠い国から来た人がにっこりと笑いかけたのが合図みたいにスコールがこの町に到達した。土砂降りのなか鳩が逃げてく、どこで眠るのだろうね。夏やなあって誰かが言ったのが聞こえて、また雷が鳴って、僕たちはまだ取り残されたままで、それでも手を繋がない。夏はバランスがうまくとれないみたい。
それにしてもひどい雨。野良犬はどこ。野良猫はどこへ。みんな僕の枕元においで。僕を、踏んで噛んで殴って確かめて、確かめさせて 血を流して 生きていることを教えて。
マラカスの音遠ざかる。星が僕のために瞬く。犬とねこの代わりに絶望がベッドサイドに立って。早くしないと連れて行かれてしまいそう、果てしなくさみしい砂漠が冬で一面の白い雪の中一人きり音もなくたった今ついた足跡もすぐに消えるかなしい夢をもう何度見たの。誰か叶えて彼と彼の周りのすべて全ての願いごと。

薄いチュールに覆われてたあの娘の肌が真っ白できれい。痩せた胸に骨が浮いていて憧れた。朝は身体を反らしながら坂道を嫌々下る。夕焼けの中大丈夫寂しくない寂しくないと、脚と目に力をいれて踏ん張って坂道を登って帰っていた。いつも出かければそこへ全て置いて忘れてしまおうと思う。意思を持って全てをこなしたいのに。必要なものだけをあるべきところに収められたらそれ以外は全部捨ても構わないはずなのに、どうしてそれができないんだろう。なにもかも余計なものが多すぎる。早くさっぱりすっきり過ごせますように。願ってばかり。