自分の目を見ないことよ まぶた閉じて もう怖くない

雪がゆっくり降り始めて 肌に張り付いて溶けていった 皮膚に染みこんで血管をとおった先の わたしの中の一番暗い部屋でそれはまた凍る ゆっくりと でもまっすぐに心臓まで届いて わたしは痛くて泣いて消えた
春がくるまで気づかなかったみたい 小さなクリーム色の蝶々が何百も よこたわった身体にとまって そこから滲みでた液体を吸っていた 白いねこがやってきてわたしの指を一本食べた 大きなからすが右目を啄ばんで飛んでいった 少し軽くなって乾いた身体に 小さくて青い花が咲いた
うしろでカーテンがゆれる 風がすりぬける いつもそこにあったものが もうない 
だれか止めて なにもかも混ざってしまう いつもだれでもないひとりでありたいのに