9月

私が体を回転させてマンションの、9階から落ちている。8階分の窓の明かりが全てついていて視界がチカチカする。3回転半で地面が目の前に見えて、はっと目を覚ましたら眠くて眠くて、昨晩外せなかったコンタクトで目も開けられなかった。せーのと言って起き上がってシャワーを浴びて支度をしてバイトへ行った。

あたしの名前はひらがなで、同じ音でつけられていたかもしれない幾つかの漢字を思うと興奮する。小学生のころには、つけられたかも知れないほかの名前の候補もしつこく尋ねた。はるな、はるか、くれん、はな。どの名前でも想像すれば、私だけども違う女の子だ。くれんやはるかだった私をよく想像する。たまに名前にその為人がぴたりとあった人がいるなあと思うけど、私は他人から見ればどうなんだろうってこともよく考える。新しく出会った人にはよく名前の漢字とか由来を尋ねて。人の名前が昔から好き、昔からようこって名前が特に好き。陽子でも洋子でも葉子でも。まりちゃんも。きょうこも。

歩道橋の手すりに登って、目をつむった。あるいは堤防に、学校の塀に、屋上の淵に。目を瞑ったまま、渡りきってみせるわ。信じる?見てて

私の化粧はとても薄いしこだわりもないんだけど、リップの色だけは譲れない。好きな口紅持ち歩かなきゃ落ち着かなくて、散歩でさえも持ち歩く。忘れた日には塗り直せないことが許せなくてコンビニで買っちゃったりする。今は薄い薄いベージュとピンクを混ぜたような、桃の皮のクリーム色とピンクの境目のような色の口紅がお気に入り。ツヤツヤてかてかうるうるの唇も好きだけどマットでしっとりしてるのが私には似合うと思う。グロスより口紅の方がなんだかロマンチックに思うし、キャップをかぽちゃ、ってはめる音が好き。女の子にはわかると思うけど本当にこんな音なのよ。でも次に買う新しいのならグロスが欲しい、今度は熟した柿みたいなオレンジを水で薄めたような色がいい。下着にカーディガン、ボタン全部止めて、ジーンズ合わせてデートに行く。髪は巻かない。9月、というか今年の秋はそういう気分


「私がねなぜかね、5本、線を引くとね、全部𖤐になっちゃうのよ。いちにさんし、ご。𖤐いちにさんしーご。𖤐𖤐ほら。」
    
           𖤐
    𖤐 𖤐
        𖤐
「きらきら星が好きなせいよね。星が一番かわいいし。」

            𖤐
「「たくさん描いたらいいよ。好きなだけ。」と言ってくれる人ときっと一緒に暮らすんだ。私はきっと、そういうふうにできているの。」

𖤐
              𖤐
    𖤐

  𖤐
𖤐
         𖤐
 𖤐
               𖤐