エア

ここからはもうなにも見えなくなった。見えなくなる所まで来て、もう戻れなかった。先にも進めなくてすべてが遠く、気も遠くなって本当はここで自分のことも終わらそうと思った。服も着ていなかったし上も下も前も後ろも、水も、土も、なにも、なにもかもが見当たらなかったのでそれはできなかった。息を止めてもすぐにまた吸ってしまう。自分を迷子だと思って絶望して途方にくれた。でも、そういうときはいつもだれかが案外あっさりと自分を見つけてくれて、迎えに来てくれて、大丈夫だった。そういう星がついてくれているんだと思ったし、私を見つけることのできる人がいてしかも愛してくれていると信じた。

怖くなるのはいつも忘れたことに気がつくからだった。時計が回っているのを意識すれば足がすくむような感覚


夢の中ではあなたはいつも私の隣にいる。私のことを好きだと思っている。ときに燃えて消えてしまいたいと思ってる。

大きなけやきの木がその小学校の象徴だったけれど、校庭の端にもっと大きなメタセコイヤが生えていて、私はそっちのほうが好きだった。風に凪ぐ柔らかい葉を見上げた記憶はもう嘘まじりかもね。だんだん遠のく。そう、ここからはもうなにも見えなくなった。なくなったんじゃなくて、遠くはなれたから。戻れなくても、近づく手立てはあるかもね。


自分の左手で右手をつかんで。腕でできたいびつな円の中にあなたの体
そのまま聞いてほしいの
私って本当はあかるいよ ねえほんとうにたのしいことだけがずっとつづくといいのにね。